2010年6月25日金曜日

自殺未遂に健康保険は使えない?

自殺未遂の息子を母親が刺殺した、昨年の事件を振り返ってみたいと思います。 以下MSN産経ニュース(2009.7.25)

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25日午後5時15分ごろ、東京都文京区千駄木の日本医科大学付属病院から「入院中の患者を家族が刺した」と110番通報があった。警視庁駒込署員が駆けつけたところ、集中治療室に入院していた千葉県柏市西原、会社員、和田正人さん(40)が胸を刺されており、近くにいた母親が「刺しました」と認めたため、殺人未遂の現行犯で逮捕した。

逮捕されたのは同県我孫子市我孫子、無職、和田京子容疑者(66)。正人さんは約2時間半後に死亡したため、容疑を殺人に切り替える方針。同署の調べによると、京子容疑者は午後5時10分ごろ、隠し持っていた包丁で正人さんの胸を刺した。病院関係者が目撃し、110番通報した。正人さんは自傷行為を行い、約10日前から入院していた。同署は動機を調べている。

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その後の裁判で、殺人に至った状況が浮き彫りになります。昨年の7月15日に、農薬会社の課長だった和田さんは、借金などを苦に自殺をはかり、都内の病院に搬送されました。

彼は一命を取り留めたものの、意識は戻りませんでした。自殺未遂の場合は健康保険が利かないため、家族は病院からは7月末までの治療費が約500万円かかると告げられます。

妻はこの時、医師に「私が人工呼吸器を外す」と訴えた、ということです。高額の治療費に苦しむ家族を見て、母親はベッドに横たわる長男を刺殺してしまったのです。

この母親には、懲役5年の求刑に対し、懲役3年執行猶予5年の判決が言い渡されました。精神的に追い込まれ、冷静な判断力を失ったためで、同情の余地が大きいとの理由からです。

問題は、彼の母親を殺人にまで追い込んだ、高額な治療費です。なぜ、健康保険が使えなかったのでしょうか?以下その根拠となる条文です。

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健康保険法第116条 被保険者又は被保険者であった者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に給付事由を生じさせたときは、当該給付事由に係る保険給付は、行わない。

国民健康保険法第60条 被保険者が、自己の故意の犯罪行為により、又は故意に疾病にかかり、又は負傷したときは、当該疾病又は負傷に係る療養の給付等は、行わない。

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要するに、自殺未遂は、故意に基づく事故ですので、「故意に給付事由を生じさせた」に該当するとされ、保険給付はできないことになっています。ただし、精神障害が原因で自殺未遂となった場合には、「精神疾患による事故」であるとされ、「故意」によるものではないとして、保険給付が認められることになるわけです。

日本医科大学付属病院は「故意に基づく事故」とみなして、治療費を請求したわけですが、個人的には、はたして精神疾患がなかったかどうか、疑わしいと思います。その可能性を、慎重に検討してもよかったのではないかと思うと、ストレートな病院の対応には、納得できない感情が残ります。

2010年6月12日土曜日

男は顔じゃない? 「顔の傷訴訟」について

顏や首の後遺症の場合、男女で補償に大きな差があるのは、以前から疑問でした。体だけではなく、心にも大きな傷を負って苦しむのは、女ばかりではありません。こんな差別が堂々とまかり通ってきたこと自体、問題ではないかと思っています。

現行の労災補償では日常露出している部分の障害の等級は女性が7級、男性は12級です。12級だと一時金しかもらえませんが、7級なら年金として毎年受け取れます。報道によれば、厚労省はやっと見直しの検討を始めるそうです。

以下、読売新聞(6/10)の記事です。

「顔などに大きな傷跡が残った労働災害の補償で、男性は女性よりも低い障害等級とする国の基準は法の下の平等を定めた憲法に違反するとして、京都府の男性(35)が等級認定の取り消しを国に求めた訴訟で、厚生労働省は10日、国の基準を違憲として認定の取り消しを命じた京都地裁判決を受け入れ、控訴はしないと発表した。」

2010年6月9日水曜日

がん細胞だけ破壊するウイルス

6日の熊日新聞によると、正常な細胞を傷つけず、全身のがん細胞のみを破壊する治療薬となるウイルスの作成技術を、鹿児島大学大学院の小戝教授グループが開発したとのことだ。治療薬は米国の企業が製造中で、2~3年内に臨床試験開始を目指すとしている。

がん細胞の中だけで増殖し、がん細胞を破壊する従来の遺伝子組み換えウイルス(CRA)の遺伝子配列を、3つにパーツ化して自由に組み合わせることで、高度で多様ながん治療ウイルス(m-CRA)を迅速に(従来の約100倍)作成できるようになったようだ。

小戝教授は「将来は末期がんや進行がん患者の症状改善が期待できる。一刻も早く実用化したい」と話しているとのことだが、ぜひそう願いたいものだ。

2010年6月3日木曜日

変わらないことの大切さについて

昨日はソーシャル・キャピタルについて考えてみたけれど、比較的長寿な田舎のお年寄りにとってのソーシャル・キャピタルとは具体的にどんなことを意味するのだろうか?

我が家のご近所では徐々に一人暮らしのお年寄りが増えてきた。一人暮らしとわかれば民生委員からは週に一度、場合によっては毎日のように電話が入る。しかしこれは公的なものだし、万が一家で倒れていても、その日に気づいてくれるかどうか疑わしい。

ご近所のお年寄りは何をしているか。一人は毎日カーテンが開いているかチェックしているらしい。昼になってもそのままなら気になって様子を見に行っているという。別なお年寄り仲間はしょっちゅう訪ねて行っているらしい。それもお茶請け持参である。まぁ以上のような具合で孤独死などとは無縁である。

我が家は古い家で、改装を繰り返しているのでバリアフリーなどとはほど遠い。畳の部屋に板張りの部屋、増築部分にはいくつも段差がある。にもかかわらず、母はつまずくこともなく毎日行ったり来たりしている。

その母が、街に出るとほんのわずかな地面のふくらみにつまずいて転倒する。もちろん屋内屋外問わず慣れないところはだめである。

家事もそうだ。がしゃがしゃと扱いが粗雑になったとはいえ、炊事洗濯などの仕事は妻に負けない。というか負けるのがいやなのか、手伝うのをいやがり、可能な限り自分でやろうとする。長年やってきたことを、やらせてもらえないのが、かえって不満の原因となる。

生活環境の変化が少なければ、体が弱ったり、多少ボケたりしても、けっこう今までと同じように生活でき、それが張り合いとなって老人の生きる意欲につながっていると思う。

変わらないことの大切さ。それは若い人には、なかなか理解しがたいことかもしれない。しかしながら、この高齢化の時代にあって、それは重要なポイントになっていると私は思う。

2010年6月1日火曜日

日本人に長寿が多い理由

日本人は欧米人と比較して、特別健康的な生活をしている訳ではないようだ。喫煙率も高いし、塩分もとり過ぎらしい。アメリカのイチロー・カワチ教授によれば、日本人は「ソーシャル・キャピタル」に長寿の要因があるとのことだ。 ソーシャル・キャピタルといえば通常「社会資本」だろうが、社会学的には「社会関係資本」の意味で、ハードではなくソフト、つまりは地域社会の人間関係を指している。

長野の佐久総合病院の研究でも次のように指摘されている。 「村では多少認知症が始まっていても、ずっと生活の環境が変わらないため普通に暮らせているお年寄りが多い。認知症と認識されないで『歳だ』くらいで暮らせている。あるいは多少のことならば周囲が支えてくれるため、生活上不都合はない。このレベルの方が病院という異なった環境に入ると、環境変化が大きいこともあり、一気にせん妄などの認知症が目立つ」(佐久総合病院刊「農村医療の原点V」) これは「ロゼト効果」と同じことではないか・・・。

「ロゼトとは1882 年に1,600 人ほどのイタリア移民によって形成されたペンシルバニア州のコミュニテイです。その地域における1935 ~85 年までの50 年間の地域コホートスタデイから、そこの人々は他の地域より低い収入と教育歴で、そのうえ飽和脂肪酸の割合の高い食生活にもかかわらず虚血性心疾患の死亡率は約半分でした。その理由として考えられることは、この地域社会は移民特有の連帯感が尊ばれていたのと、格差を見せつけない規範意識があったことです。」(沖縄医報VOL.46)

長寿には田舎の老人たちのような人間関係が有効なのでしょう。ただ周りが老人だらけで、50代半ばになっても若もんと言われる私にとっては複雑です。田舎の濃厚な人間関係は、かなりうっとうしいです。私が老人と言われるようになったら、利便のよい都市部で暮らしたいと思っているのに・・・。 もっとも要は支え合う人間関係であって、田舎暮らしではありません。老後をいかに生きるるかという時に、人間関係は特に重要ということだと思います。

2010年5月28日金曜日

「アメリカ人がトイレに流すもの」を読んで

アメリカでは、死んだ金魚をトイレに流すんだそうだ。残飯類からカップめんの食べ残しまでトイレにすてるらしい。

もっと怖いのは、医療現場で「使わなかった薬は必ずトイレに流すように」と患者に指導していることだ。不要になった薬や期限の過ぎたサンプル薬などもトイレに廃棄していると、その記事(日経メディカル・緒方さやかの「米国NPの診察日記」)には書いてあった。

米国では毎年約1億1000kgの薬剤が病院や介護施設によって下水に流されているらしい。なんとも怖ろしい話だ。アメリカ人の大雑把な感覚は理解を超えている。

2010年5月21日金曜日

「サラ川ベスト10」第一位は・・・

第一生命の第23回サラリーマン川柳ベスト10が発表されました。 第一位は「仕分け人 妻に比べりゃ まだ甘い」でした。

私も一句 「給料日 犬も恐がる 妻の顔」 私はサラリーマンではありませんので、私の妻のことではありません、念のため。 なお、その他の優秀作品については第一生命のページをご覧ください。

もっとも、現実はもっときびしいのではないでしょうか。保険業界では収入が激減したり失職したりして、離婚にまで追い込まれた元同僚も少なからずいました。

最近は”うつ病”になって妻に逃げられるケースが多いとか・・・。共働きで頑張っていても、つれ合いが病気になったら共倒れです。仕方がない面もあり、責める訳にもいかないようです。

早く景気回復してほしいものですが、まだまだ時間がかかりそうですね。

2010年5月14日金曜日

潰瘍性大腸炎の恐怖

彼は近所の男性で、私より三つ年上だった。彼が亡くなって何年になるだろうか・・・

妻と離婚し実家に帰ってきていたのだが、同居することとなった高齢の両親から頼りにされ、近隣との付き合いも実質世帯主として扱われていた。

その彼が突然まえぶれもなく入院した。具合が悪いという話は聞いていなかった。田舎のことで、近隣の住人のことはすぐに耳にはいる。お互いがどういう持病を抱えているか、みんな知っているのだ。

だが彼は例外だった。何事がおこったのかとみんないぶかった。その後、「どうも内臓が良くないらしい」「ガンではなかったと両親が喜んでいた」という話は私の耳にも聞こえてきた。

ストレスだろうな、私はそう思った。熊本市内の会社で営業の仕事をしていたらしいが、いろいろ苦労があるだろうな不景気だし・・・などと考えていたのだ。

現実は私の予想を裏切った。彼はその後3か月もたたないうちに亡くなったのだ。病名は潰瘍性大腸炎。その名の通り、大腸の粘膜に潰瘍ができる難病だ。彼の両親が「ガンでなくて良かった」と喜んだにもかかわらず、ガンよりも恐ろしい結果になった。亡くなるときはガリガリに痩せていたという。「ガンの方がよっぽどましですよ、息子さんの場合」と担当医が言ったという話も後になって聞こえてきた。

難病の患者はけっこう近くにたくさんいる。私はいろいろ仕事で話を聞くたびにそう思うようになった。

2010年5月13日木曜日

消えた入院特約

ある日、ガン保険にご加入のお客様から電話があった。「私のガン保険は大丈夫?ちゃんと出るよね?」一瞬、意味が分からず言葉が出ない。「ちゃんと保険があるかどうか見てくれないか?」返事がすぐ返ってこないのでたたみかけるお客様。

「もちろんあります。ちゃんと出ますよ。何か病院で言われたんですか?」やっと返事が出来てほっとしたが、お客様の話は予想と違っていた。

「じつは○○保険に加入していたんだけれど、入院特約が消えていてね。何もらえなかったんだよ。入院特約がないって言うんだ。若いころからずっと掛け金払ってきたのに・・訴えてやりたいよ。」

いろいろ聞いてみると、長い間○○保険の△△さんにまかせっきりで、保障の内容を確認していなかったというのだ。ある時、満期更新で掛け金が高くなるというから、同じ金額くらいになるように内容を変更してほしいと依頼して、その後どのような内容に変更されたのか見ていなかったようなのだ。

△△担当者は掛け金を下げる為に入院特約をすべてはずしていたらしい。またなぜそんなことをしたのか?じつは日本の保険会社は保険金額で担当者の報酬金額を決めている。だから死亡保障の金額を下げたくなかったのだ。入院特約を外しても自分の収入にはあまり響かない。お客様の保障より自分のふところ具合を優先した結果だった。

もちろんこのお客様はさんざん○○保険に苦情を言って、なんとかならないか持ちかけたらしい。だが、更新時の申込書にお客様は署名捺印されている。これは契約なのだ。確認しなかったお客様にも落ち度があった。

担当者はもちろん支社長もおわびに来たが、内容は変わらずお客様は入院保障を失った。そのお客様、糖尿病の診断を受けて初めて自分の保険証券をまじまじと見たらしい。

今は持病があっても入れる医療保険がなくはない。だが保障内容にはいろいろ制限があり、掛け金も高い。勉強代はあまりに高くついたと言わざるを得ない。

2010年5月6日木曜日

出なかった給付金

あれはいつだったろうか・・・もうずいぶん昔のこと。 私が外資系生保のコンサルタントだった頃のこと。

ある日、お客様のお母様から電話があった。 「娘ががんになりました、卵巣がんです」

顧客にがん患者のいなかった私は一瞬とまどって 何を話していいかわからなくなった。 「大変だったですね」とかいって口ごもってしまった。

「あの、がん保険のことですけど?」お母様の方から用件をきりだされた。 我に返った私は、病気の内容をを聞き取り用紙を届けること、 病院の診断書が必要であることなどを伝えて電話を切った。

私は本人のお見舞いに出かけ、お母様に手続きを依頼してほっとした為、 その後どうなったか確かめずに半月ほど過ぎた。

ある日また突然にお母様から電話があり、 「がん保険を解約します。すぐ手続きして下さい。」と 不機嫌な電話がかかってきた。

あわてて給付の内容を確認すると、がんの診断給付金が無い!! お母様から聞いた状況では、診断書に悪性の記載が無かったとのこと。 診断書に悪性の記載が無ければ腫瘍といえどもがん保険は使えない旨 説明し、がんと診断した担当医に書き直すよう依頼してほしいと伝えた。

その数日後、またお母様から連絡があり。担当医は「がんに間違いないと思うが、 書き直しはできません。」と返答したとのことであった。 「ほとほといやになりました、やっぱりがん保険は解約します。」と お母様は言われ、その通り解約された。

入院手術までしたら、当分保険に加入できないことなどを説明し、 続けられるよう説得したが無駄だった。

ドクターは一度書いた診断書は訂正しない!痛い経験として、 私の記憶に残ることとなった。